「税務調査」とは、申告した税額に間違いがないかをチェックするため、国税庁や税務署などから職員がやってきて行う調査のことです。税制の適正化、公平性を目的に、法人・個人を問わず調査対象としています。
そして、調査対象はランダムで選ばれるわけではなく、調査に入られやすい方には傾向があるといわれています。人手にも限りがありますし、全件をチェックするわけにはいかないのです。ではどのような場合に調査対象になりやすいのか、ここでその特徴について言及していきます。
個人事業主も税務調査の対象
個人事業主、フリーランスの方が「税務調査を受けた」という話はそれほど聞くものではありません。しかしながら、会社でないからというだけで税務調査の対象から外れるわけではありません。調査件数、調査を受ける割合はそれほど高くありませんが、当然、個人事業主に対しても税務調査がやってくる可能性はあります。
そのため「税務調査は、自分のようにフリーで働いているようなところにやってこないだろう」と安易に考えるべきではありません。日々の記帳、証憑の保管、確定申告など、税務もきちんとこなさなければなりません。
税務調査が入りやすい個人事業主の特徴
どこを税務調査の対象とするのか、その選定基準は明示されていません。そのため「〇〇な個人事業主は税務調査を受ける」などと断言することはできませんが、次に挙げる特徴を持つ方は、傾向からいって比較的税務調査の対象になりやすいと考えられます。
売上高が大きい
税務調査の対象になりやすい個人事業主の特徴の1つとして、「売上高が大きい」という点が挙げられます。
売上高が大きいだけで何か具体的に疑いをかけられるわけはありませんが、事業規模が大きいとそれだけ調査を実施する費用対効果が大きくなるため、その意味では相対的に調査が入りやすくなると考えられます。
税務調査を実施するにもコストがかかりますので、同程度の時間をかけるなら10万円を徴収できる見込みのある事業者より、100万円を徴収できる見込みのある事業者の方が費用対効果は大きくなります。
とはいえ、売上だけで判断されているわけではない点には留意が必要です。
生活ができないほどに所得が小さい
個人事業主の場合、会社役員や会社員としての側面も兼ねていないのであれば、事業から得られた所得が生活費に直結します。1,000万円の売上に対して経費が900万円かかっていると、その他控除も含めて所得税を非課税にすることが可能です。
ただそうすると利益として残ったお金は100万円程度になり、独立して生計を維持することが難しい金額となります。架空の経費計上をしていれば実態はより大きな利益がありますので生活はできるものの、「この所得だと生活ができない可能性がある。適切な処理をしていないのではないか。」と疑われやすくなるでしょう。
同業他社との差が極端に大きい
相場から逸脱していると目を付けられるリスクが上がるとも考えられています。もし、同じ職種での利益率が95%であるにも関わらず、ご自身の利益率が5%である場合、「なぜそれだけ大きな経費が必要なのか。本当に正しく経費計上されているのか。」と疑問に思われても不思議ではありません。
不審な経費があり、売上などは同業他社と大差ない一方で極端に所得が小さいようなケースだと、税務調査に入られるリスクは少なからず上がってしまうでしょう。
過去の申告内容との差が極端に大きい
比べる対象は同業他社など外部の存在だけではありません。これまでご自身が申告してきた内容との照らし合わせも重要です。チェックされるのは1年分とは限りませんので、これまでの推移の状況から大きく逸脱した変化があるときは、疑われる可能性も出てきます。
例えば、売上高が開業当初から横ばいであった事業者が、前年に突然10倍に膨れ上がった場合、素人目に見ても「何かあったのだろうか」と考えてしまいます。極端に売上高、利益などが下がっている場合も同様に悪目立ちしてしまいます。
確定申告を無視して手続をしていない
「確定申告自体をしなければ余計な疑いをかけられずに済むのではないか」と考える方もいるかもしれません。しかし確定申告の義務があるにも関わらずこれを無視することは絶対に避けなくてはなりません。
確定申告をしなければ財務状況を知られないとも限りません。取引先などがする税務申告、税務調査に伴って、売上情報などが知られることもあります。確定申告以外にも情報を入手する方法はたくさんありますので、ちょっとしたことがきっかけで無申告が発覚することも考えられます。
そして申告義務に従わなかった場合、無申告加算税というペナルティが課されて、本来の納税額より大きな税負担を負うことになってしまいますので注意が必要です。
海外取引を積極的に行っている
海外取引を行う場合、消費税や源泉所得税の取り扱いでミスが発生しやすいです。法人に関してですが、実際、国税庁の行った調査では海外取引のある事業者について多くの申告漏れを見つけており、多額の追徴課税が行われています。
国税庁が海外取引を行う事業者について注視していることからも、海外取引をしていると税務調査の対象になる可能性が高まるということができるでしょう。
今ではWeb上で世界中の人々と容易にやり取りを行うことが可能になっていますが、税務についても適正に実行することを忘れないようにしましょう。
個人事業主に対する税務調査の実態
国税庁の示すデータによれば、法人に対する税務調査の実施割合は約3%です。一方で個人事業主は約1%と、法人の1/3程度です。
ただ、この値は全事業者に対する割合であり、上記特徴を持つ個人事業主に関しては実施確率を1%だと捉えるべきではないでしょう。
税務調査を受けない確証はどの事業者にもありませんので、日常的にバックオフィスに対しても高い意識を持って取り組むこと、あるいは税理士に依頼するなどして適正な申告を行うように心がけましょう。