帳簿作成は、経理業務、ひいては企業運営において基礎的かつ重要な作業です。経営戦略を考案していく上でも日々の帳簿作成の積み重ねが間接的に重要な役割を果たします。そこで当記事では帳簿作成に携わる方に向けて、5つの基本的な注意点を紹介していきます。また、法人・個人事業主に分けて帳簿の保存期間についても説明します。
帳簿作成時の注意点
帳簿とは、事業の取引や財務の流れを詳細に記録するものであり、会社法によってその作成は義務付けられています。「会計帳簿」とも呼ばれ、その内容の正確さが決算書の信頼性に直結しますので、ミスなく、確実に帳簿は作成されていなければなりません。
以下では、適切な帳簿作成をするために注意すべき点を5つにまとめて説明していきます。
各帳簿の種類と目的を理解する
帳簿は種類が多く、「どの帳簿に、どんな内容を記載するのか」がわからなくなる場合があります。
まず「主要簿」と「補助簿」に大別できます。主要簿はどの会社にも不可欠な帳簿であり、取引に伴い必ず記入を要します。これに対し補助簿は、必要に応じて記入を行うものです。主要簿の記録内容を補う目的で使用されます。
以下にそれぞれの具体例を示します。
- 総勘定元帳
- 仕訳帳
主要簿
- 現金出納帳
- 預金出納帳
- 売掛帳
- 買掛帳
- 固定資産台帳 など
補助簿
帳簿作成にあたってはこれらを適切に使い分ける必要があります。
勘定科目を正しく使う
記載する科目も多種多様で、各科目それぞれに意味がありますので、こちらも適切な使い分けが必要です。
また、一度選択した勘定科目は原則として変更することができません。もし、ボールペンなどの文具を「消耗品」として設定した場合、後々「文房具費」として適用することができなくなります。その後同じ勘定科目を適用し続けることを覚えておきましょう。
勘定科目に関しては企業ごとに運用方法が異なるケースもあり、独自の経費がある場合は新たな勘定科目を増やすこともあります。これら自体に問題はなく、大事なのは売上や収益が正確に把握できることです。混乱なく使えるのであれば問題ありません。
記帳はこまめに行い溜め込まない
取引は毎日のように発生し、その分記帳すべき内容も日々増えていきます。そのためこまめに記帳は行い、溜め込むことのないようにしないといけません。「取引のあった当日、あるいは数日以内に記帳しないといけない」といったルールは存在しませんが、ミスなく記帳を行うためにもできるだけ早めの対応が求められます。
少なくとも当月中には処理を済ませておくべきでしょう。
また、正しく記帳を行うためにも、根拠となる情報が記録された領収書等も適切に管理しないといけません。領収書も溜め込むと、どれがどの取引の領収書なのかわからなくなってしまい、確認に時間も手間もかかってしまいます。当然、ミスも起こりやすくなります。
記帳ミスを防ぐための対策を取る
帳簿への記入時は、数字のミスがないことをよく確認しましょう。チェック体制を整えておき、ミスを長い間放置しないことが大切です。後から特定のミスを見つけるのは困難で、余計な労力を費やすこととなるでしょう。
また、計算ミスが含まれたまま税の申告をしてしまうと、ペナルティを課されてしまうおそれもあります。
そこでミスが起こりにくくなるような体制を整えることが大事です。例えば次のような対策が基本的なこととして挙げられます。
- チェックリストを作成する
- ダブルチェックを行う
- 作成したマニュアルに沿って作業を行う
- 電子化して必要な情報がすぐに検索できるようにする
数字にズレがないか定期的に確認する
前項の内容とも共通しますが、数字のズレを完全に防ぐことは困難ですので、ミスが発生する前提で、定期的な確認を行うようにすべきです。
計算ミス、入力ミスなど、様々な可能性を考慮して、伝票の突き合わせなど、確認するための時間を確保しておきましょう。
数字のズレがあったときに使える、よくあるテクニックとして次のものが挙げられます。
- ズレた金額を2で割る(足すべきところを逆に引いてしまったなど、2倍の差が生じていることもある。このとき、ズレた金額を2で割ってみることでミスの原因が発覚することもある)
- ズレた金額を9で割る(入力時の桁を間違えたとき、9で割ることでミスの原因が発覚することもある)
- 参考元の資料を疑う(そもそも入力時に参照した情報が間違っている可能性もあり、その可能性を度外視しているといつまでもミスの原因を突き止めることができなくなってしまう)
帳簿の保存期間
帳簿作成をするだけでなく、帳簿や関連文書の適切な保管も大事です。単なる組織的規律としてではなく、法律により明確に義務付けられているからです。自社の信頼性を保つだけでなく、法的な問題を避けるために欠かせません。
保管期間は、運営している事業主体が法人なのか、それとも個人事業主であるのかによって異なります。
法人の場合
法人としてのビジネスを運営する場合、帳簿の保存期間は主に税法と会社法によって規定されています。
- 法人税法における保存期間:7年
- 会社法における保存期間:10年
法人税法では帳簿に対して7年間の保存期間を設定しています。これに対し、会社法ではより長い10年間が設定されています。
保存するだけでなく、監査を受けたときにすぐに帳簿が取り出せるよう、アクセスの良さにお配慮が必要です。
個人事業主の場合
個人事業主にも、帳簿や関連書類の保存が法律により義務付けられています。その期間は、青色申告・白色申告の違いにより異なります。
- 青色申告の場合:帳簿だけでなく、決算関連の文書や領収書などもすべて7年間保存する
- 白色申告の場合:法定の帳簿は7年間、請求書や領収書など、その他の文書については5年間保存する
帳簿を誤って破棄することのないように注意しましょう。必要な保存年数を正確に把握し、その間紛失することのないよう、また、適切にファイリングするなどして必要な情報にアクセスできる状態を維持しておくと良いでしょう。