相続が発生すると、遺産をどのように分けるかを決める必要があります。
この手続きを「遺産分割協議」と呼び、協議の結果をまとめた書面が「遺産分割協議書」です。
円滑な相続手続きのためには、適切な協議と正確な書類作成が欠かせません。
本記事では、遺産分割協議とは何か、また遺産分割協議書の作成方法について解説します。
遺産分割協議とは
遺産分割協議とは、相続人の全員が集まり、被相続人(亡くなった人)が残した財産をどのように分けるかを話し合う手続きです。
被相続人が遺言書を持っていないときなどに行われます。
相続人全員の合意が必要
遺産分割協議は、相続人の全員が参加し、合意することが前提です。
したがって、相続人のうち1人でも同意しなければ協議は成立しません。
相続人が未成年であったり、認知症などで判断能力が低下していたりしてする場合は、代理人や後見人の参加が必要になります。
また、遺産分割協議後に新たな相続人の存在が判明した場合も、協議は無効となります。
なお、合意しているという事実が重要なため、相続人全員が実際に顔を合わせなくても遺産分割協議は可能です。
電話やメールでの話し合い、または数人で決めた案を他の相続人に確認・同意してもらう形でも有効な協議とみなされます。
遺産分割協議の期限
遺産分割協議の時期について法的な期限はありません
しかし、相続開始を知った翌日から10カ月以内に相続税の申告が必要なため、申告期限までに遺産分割協議を行った上で分割を終えるのが望ましいと言えます。
また、遺産の分割を放置すると他の相続人が遺産を使い込んでしまったり、売却や賃貸などが行えず、相続税に関する特例が受けられないといったことが考えられるため、早めに協議を開始することが賢明です。
遺産分割協議書の役割と書き方は?
協議の成立後、合意内容を文書にまとめたものが「遺産分割協議書」です。
法律上、遺産分割協議書を作成する義務はありませんが、書面を作成しないと後々トラブルが起こる可能性があります。
さらに、不動産や預貯金の名義変更などをする上で遺産分割協議書の提出を求められる場合が多いため、合意内容を明確にし、相続手続きをスムーズに進めるためにも遺産分割協議書を作成することが大切です。
記載事項
遺産分割協議書は、相続税の申告や財産の名義変更を行う際に必要となるものです。
法的に定められた形式があるわけではありませんが、次のような情報を明確に記載することが重要です。
- 被相続人の情報:氏名、出生日と死亡日、本籍地と住所地など
- 相続人全員の情報:氏名・住所・続柄など
- 分割対象となる財産の詳細:不動産の登記簿情報、預貯金の口座番号など
- 各相続人が取得した財産
- 協議書を作成した日付
- 相続人全員の署名・押印
これらの内容に不備があると差し戻されることがあるため、慎重に作成する必要があります。
また、相続人全員の署名・押印がない場合は無効となりますので注意が必要です。
遺産分割協議における注意点
遺産分割協議について以下の点に注意すると良いでしょう。
- 財産目録を作成する
- 後日判明した財産の取り扱いについて決めておく
財産がどこにどの程度あるのかを整理するため、「財産目録」を作成しましょう。
不動産、預貯金、有価証券、借金など、すべてを網羅する必要があります。
また、遺産分割協議の前にしっかりと調査を行ったにもかかわらず、後日新たな財産が見つかる場合も少なくないため、あらかじめこのような場合についても決めておけば、協議をやり直す必要がありません。
まとめ
遺産分割協議の概要と遺産分割協議書の作成方法について解説しました。
遺産分割協議書は必ず作成しなければならないというわけではありません。
とはいえ、遺言が無い場合、相続税の申告などの手続きがあったときには、遺産分割協議書が必要になります。
各相続人の取得割合によって、相続税の額が決まるため、相続税がどれくらいかかるのか不安な方は税理士に相談することを検討してみてください。