会社設立を設立するには定款が必要です。これは会社法で定められており、“推奨”ではなく、“義務”です。そのため法人としてビジネスを始めようとしている方は、「定款とは何か」ということを理解しておく必要があります。
また、定款の概要を理解するだけでは不十分で、定款に記載すべき事項についても知っておかなければ作成は行うことができません。ここでは設立件数の比較的多い株式会社と合同会社に焦点を当てて、定款に関する解説をしていきます。
「定款」とは法人の根本原則のこと
定款とは、法人の目的や組織の設計、活動方針に関する根本規則のことです。
就業規則などの内部規律を体系づける大元の規則であるため、「会社にとっての憲法」と表現されることもあります。
ある法人が株式会社となるのか、合同会社となるのか、その区別は定款への記載内容により決定づけられます。合同会社と合名会社、合資会社の別も、定款への記載に従い定まります。会社が行うことのできる事業内容も同様です。
その他、取締役や取締役会、監査役、監査役会といった会社機関の設計も定款で行いますし、会社にとって重要度の高い多くのルールは定款で定めることが法定されています。
株式会社設立時の定款について
定款は法人の根本規則ですので、これを欠いて会社設立することはできません。
株式会社設立の基本的な流れも、①定款の作成、②出資の履行、③設立登記の申請といった形で説明されることが多く、定款の作成は省くことができません。このことは、会社法にも明記されています。
株式会社を設立するには、発起人が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印しなければならない。
引用:e-Gov法令検索 会社法第26条第1項
(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC0000000086)
定款に必ず記載しないといけない事項
定款を有効に作成したといえるためには、少なくとも下表にある「絶対的記載事項」を定める必要があります。
絶対的記載事項 | 詳細 |
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商号 |
その他詳しいルールは法務省のWebページ(http://www.moj.go.jp/MINJI/minji44.html)から確認可能 |
目的 |
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本店所在地 |
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設立に際して出資される財産の価額又はその最低額 |
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発起人の氏名又は名称及び住所 |
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定款への記載を検討する事項
絶対的記載事項以外の「相対的記載事項」や「任意的記載事項」についても、記載を検討します。
特に相対的記載事項に関しては、定款に定めがなければ効力を生じさせることができません。例えば「株式の譲渡に制限をかけたい」「取締役会を置きたい」といった場合には定款にその旨記載しないといけません。
設立時には「現物出資」が問題となることもあるでしょう。「財産引受」「発起人の報酬・特別利益」「設立費用」も合わせた4つは変態設立事項と呼ばれ、設立時の定款に所定の事項を記載する必要があります。
あとは「定時株主総会の招集時期」「株主総会の議長」「取締役の員数」「事業年度」などの任意的記載事項も、必要に応じて定款で明記しておきます。相対的記載事項と異なり定款への記載が効力の発生条件ではありませんが、ルールの周知・徹底を図る上では定款への記載が効果的といえます。
作成した定款には「認証」が必要
設立時の定款に対して、株式会社の場合は、「認証」の手続を行う必要があります。
本店所在地を管轄とする法務局(または地方法務局)所属の公証人に、定款の内容をチェックしてもらうのです。こちらの手続も株式会社設立に必須です。
合同会社設立時の定款について
合同会社を設立するときも、定款は必須です。
合名会社、合資会社又は合同会社を設立するには、その社員になろうとする者が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印しなければならない。
引用:e-Gov法令検索 会社法第575条第1項
(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC0000000086)
定款を作成し、その定款に対して社員全員が署名または記名押印をしないといけません。
合同会社設立の手順も、株式会社の設立と大きく異なるものではありません。
ただ、定款に関していえば、“公証人による認証が不要”という違いがあります。そのため認証費用が不要となりますし、手間も少し軽減されます。
定款に必ず記載しないといけない事項
合同会社の設立では、商号・目的・本店の所在地のほか、①社員の氏名又は名称及び住所、②社員の出資の目的及びその価額又は評価の標準、③社員の全部を有限責任社員とする旨の記載が必要です。
①と②に関しては、「社員の氏名、住所および出資の目的および出資の価額は、次のとおりである。」などとしてまとめて記載することが多いです。
③に関しては、「社員はすべて有限責任社員とする。」などと記載します。この記載により、合同会社であることが確定します。逆に「社員はすべて無限責任社員とする。」との記載を行うと、合名会社を設立することになってしまいます。
定款への記載を検討する事項
合同会社の設立で検討すべき相対的記載事項としては、「持分譲渡の要件」「業務執行社員の指名または選任方法」「代表社員の指名または互選」「存続期間または解散の事由」などが挙げられます。
任意的記載事項としては、「業務執行社員の員数」「業務執行社員の報酬」「事業年度」などが挙げられます。
それぞれ定款に記載するかどうかは自由ですが、いったん定めてしまうとそのルールに拘束されてしまい、簡単に変更することはできなくなります。そのため専門家の意見も参照しつつ、慎重に定款作成は進めることが大事です。