小規模宅地等の特例は、相続税の負担を軽くするために設けられています。
そのうちの「家なき子特例」は、自宅を持たない相続人が一定条件を満たす場合に適用される制度です。
今回は、この家なき子特例が利用できるケースや計算方法を見ていきます。
家なき子特例の対象となるケース
家なき子特例を利用するためには、相続人が以下の条件をすべて満たす必要があります。
- 被相続人に配偶者や同居している相続人がいない
- 相続開始前の3年間に一定条件を満たす持ち家に住んでいない
- 相続税の申告期限までその家に住み続けている
- 相続開始の時点でその家を過去に所有したことがない
それぞれ確認していきましょう。
被相続人に配偶者や同居している相続人がいない
相続の時点で配偶者や同居の親族がいるなら、そのひとたちの居住の継続が先に守られるため、家なき子の対象外になります。
日常の生活の場を維持する発想が優先です。
相続開始前の3年間に一定条件を満たす持ち家に住んでいない
相続人が直前3年の間に、自分や配偶者、三親等内の親族、相続するひとと特別の関係がある一定の法人名義の家に住んでいた場合は対象外です。
本当に自宅がなく、相続後に住む予定の相続人を想定しているのがこちらの特例です。
平成30年税制改正で一部変更になった要件になります。
相続税の申告期限までその家に住み続けている
相続が始まってから申告期限(原則10か月)まで継続して居住していることが前提です。
途中で売却や賃貸へ回したり、解体して更地にしたりすると、居住の継続が断たれたとみなされて適用できません。
あくまでも減額の趣旨は「居住の確保」にあります。
相続開始の時点でその家を過去に所有したことがない
相続人が対象の家や敷地を、過去に自分名義で持っていた経歴があると対象外です。
平成30年税制改正で新しく追加された要件です。
減額の計算方法
家なき子特例を利用した場合、評価額は次の計算で求めます。
評価額=相続税評価額×(1-0.8)
たとえば、相続税評価額が3,000万円の宅地なら、「3,000万円×(1-0.8)=600万円」になります。
まとめ
今回は、小規模宅地等の家なき子特例を確認しました。
同制度は、自宅を持たない相続人が親の家を相続する場合に、相続税を大幅に減らせる可能性があります。
ただし適用条件が細かく設定されており、過去3年間の居住状況や所有状況の確認が不可欠です。
誤解や計算ミスを防ぐためにも、相続が発生したら早めに税理士などの専門家に相談することをおすすめします。