相続する財産の総額が控除額を上回る場合、相続税を納めなければいけません。
なかでも不動産は価値が高く、不動産を相続した場合には納税が必要となる可能性が高くなります。
この記事では、不動産を相続した場合の相続税の計算方法を解説します。
相続税の計算
相続税の計算は次のような流れで行います。
- 1. 相続人の調査
- 2. 相続財産の調査
- 3. 仮の相続税の額を計算
- 4. 実際に納める相続税の額を計算
相続税には基礎控除があり、控除額は3,000万円+(600万円×法定相続人の数)です。
法定相続人の数によって控除額が変わるため、相続人の調査は重要です。
同時に、相続する財産をすべて調査し、その評価額を求めます。
相続する財産すべての評価額から基礎控除額を引いた金額が課税対象額です。
相続税の計算方法
相続税の計算はまず、法律で定められた相続割合(法定相続分)に従って分割した場合の、各相続人の納税額を計算します。
これらを合算した金額が、今回の相続で納税すべき相続税の全額です。
これを実際の相続割合通りに分割しなおし、相続人ごとの実際の納税額を求めます。
計算には、国税庁のホームページに記載されている速算表を用います。
相続税の税率は法定相続分の金額ごとに異なり、10%~55%です。
実際に納税する金額を求めたあとには、相続人の状況により、配偶者控除や未成年者控除などを受けられる可能性があります。
不動産を相続した場合
不動産を相続した場合、相続が発生した時点での不動産の相続税評価額を求めなければいけません。
土地の相続税評価額
土地の相続税評価額の計算は、路線価方式もしくは倍率方式で行います。
路線価方式とは、路線価が定められている土地の評価方法です。
路線価とは、道路に面している土地1平方メートル当たりの価額です。
国税庁のホームページから調べられます。
路線価に土地の面積をかけることで、相続税評価額が計算できます。
路線価が定められていない土地では、倍率方式で評価額を求めます。
倍率方式とは、固定資産税評価額に国が定めた倍率をかけることによって、相続税評価額を求める方法です。
国が定めた倍率は、路線価と同様に国税庁のホームページから調べられます。
この倍率は宅地や山林など、地目によっても異なります。
相続税評価額の減額
土地の相続税評価額は、その形状や利用状況によって減額されることがあります。
いびつな形をした土地の場合、その土地を長方形で囲った時の面積と比べて差が大きいほど評価額が下がります。
土地の間口が極端に小さい場合や、間口に対して奥行きが極端に長い場合も減額の対象です。
そのほか、貸家などに使用している土地では、貸家建付地として相続税評価額を減額できる可能性があります。
小規模宅地等の特例
一定の条件を満たすとき、土地の評価額を最大で80%減額できる特例があります。
亡くなった方の自宅が建っている土地を相続する場合、特例を適用すると330平方メートルまでの土地の評価額が80%減額されます。
この特例が適用されるのは、配偶者か故人と同居していた親族がその土地を相続する場合です。
同居していた親族が相続する場合には、相続後も相続税の申告期限までその土地に居住し続けなければいけません。
故人が事業用に使用していた宅地では、特例が適用されると400平方メートルまで評価額が80%減額されます。
特例を適用するには故人の事業を引き継ぎ、相続税の申告期限まで事業を継続する必要があります。
また賃貸事業に使用していた土地であれば、200平方メートルまでの評価額が50%減額されます。
賃貸事業には、貸家や貸し駐車場などが該当します。
特例を適用する要件として、故人の賃貸業を引き継ぎ、相続税の申告期限まで継続する必要があります。
また、故人が亡くなる3年以上前から貸付事業を開始していなければいけません。
建物の相続税評価額
故人が居住していた建物の相続税評価額は、固定資産税評価額×1.0で計算されます。
すなわち、固定資産税評価額がそのまま建物の相続税評価額になります。
賃貸として使用している建物の場合には、評価額が減額される可能性があります。
賃貸物件の評価額は次のように計算します。
建物の評価額=固定資産税評価額×(1-借家権割合30%×賃貸割合)
賃貸割合とは、建物全体の床面積に対する、現在貸している床面積の割合です。
満室の場合は100%になりますが、空室がある場合には賃貸割合が小さくなります。
まとめ
この記事では、不動産を相続した場合の相続税の計算について解説しました。
相続税を計算するには、相続財産の評価額を正しく計算する必要があります。
土地の評価額は形状や用途によって変わるうえ、小規模宅地等の特例によって評価額を大幅に減額できる可能性があります。
建物についても、賃貸物件の場合は評価額が減額されます。
不動産を相続した場合の相続税の計算は複雑なため、申告の際には税理士までご相談ください。