会社を設立するまでには様々な手続きを行わなければなりません。そしてそれぞれの手続きに際して必要書類も多数生じます。そのためスムーズに会社設立をするには、あらかじめ設立手続の全体像を掴んでおき、計画的に進めていくことが大事です。
ここではその第一歩として、基本的な手続き内容等を解説していきます。また、会社の立ち上げではお金周りのことも無視はできません。そこで税務のプロである税理士に会社設立の相談・依頼をすることのメリットに関しても触れていきます。
法人である会社を設立する意味
会社にはいくつか種類があり、特に株式会社として設立されることが多いのですが、個人事業主としてではなく法人とすることには、「資金調達がしやすくなる」「節税方法の幅が広がる」「福利厚生を充実させられる」など資金の管理についてメリットが得られるという意味があります。
さらに、個人ではなく法人である会社という形で活動をすることには「社会的な信用を得やすい」という事実上の効果も期待されています。その結果、取引の幅を広げることができますし、優秀な人材の獲得にも繋がってきます。
会社設立の基本的な手続きや必要書類について
事業を遂行する上での、会社を設立する意味・メリットが理解できたところで、具体的な手続き内容等の紹介に入っていきましょう。
会社設立までの流れ
会社を設立する場合、「会社名」「事業目的等の基本事項」「資本金」「役員」などの決定から始めます。そしてこの基本事項を基に「定款」や「設立登記申請書」を作成。これらを公証役場、法務局に提出して完了という流れです。
以下でもう少し詳しく手順を紹介しましょう。
- 1. 会社概要の検討
- 事業目的や症状、役員、出資者、本店所在地、資本金、決算期を決定していく
商号が決まれば会社実印を作成 - 2. 印鑑証明書を取得
- 出資者全員につき、個人の印鑑証明書を用意
役員と兼任する出資者は2通用意する - 3. 定款の作成
- 会社の基本事項を定款という形に落とし込んでいく
「会社の憲法」とも呼ばれる非常に重要な規定であり、法令への遵守にも配慮しつつ、経営の方針を策定していく
なお、近年は電子文書として作成する「電子定款」の利用も増えている(電子証明書・住民基本台帳カードが必要になるが、印紙代をカットできる) - 4. 定款の認証を受ける
- 株式会社の設立であれば、本店所在地を管轄する公証役場にて、定款の認証を受ける必要がある(認証手数料は50,000円)
- 5. 登記申請書類の作成・提出
- 設立登記により法人として成立するため、登記申請書類の作成および代表者の実印を押印したのち、これを法務局に提出する(登録免許税は資本金額によるが、株式会社は最低150,000円、合同会社なら最低60,000円)
提出日が会社設立日になる
登記の完了後は、履歴事項全部証明書や印鑑カード、印鑑証明書など、各種証明書を取得していきましょう。その他、設立手続自体が完了しても、税務署への届出など、すべきことはたくさんあります。
なお、株式会社の場合、起業者である発起人以外の出資があるかどうかで「発起設立」となるのか「募集設立」になるのか分かれます。発起人のみであれば発起設立として比較的簡便な手続きで足りますが、その他出資者を募るのであれば募集設立となり、創立総会(創業段階における株主総会のようなもの)の開催が必要になります。
必要書類は多岐にわたる
前項のように、会社設立までには様々な手続きを要します、手続きごとに用意しておくべきものも異なります。この必要書類の準備は起業者にとって大きな負担となるでしょう。
主な必要書類を挙げるだけでも下表のようになります。
手続きの段階 | 必要書類等 | 捕捉 |
---|---|---|
会社概要の決定から定款の認証まで | 会社の代表者印 | 会社代表者は法務局に登録した印鑑を用意 一般的には18mmの印を使用 |
会社の銀行印 | 銀行の法人口座開設、手形などの振出などに使用 | |
社印 | 見積書や領収証に使用 一般的には角印として作成 |
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ゴム印 | 本店所在地、電話番号、会社名、代表者名などを彫る 一般的には横書きで作成 |
|
定款 | 株式会社の設立では公証役場での認証を要する | |
印鑑証明書 | 発起人全員分を用意 | |
収入印紙 | 40,000円を納付し、定款に貼付 電子定款なら不要 |
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資本金の払込から設立登記まで | 登記申請書 | 商号・本店所在地・公告の方法・資本金額・登録免許税・添付書類の内容等を記載 |
認証済み定款 | ― | |
振込証明書 | 資本金の払込みを済ませたことの証明書類とするため、通帳の記帳欄・表紙・個人情報欄の3か所をコピー | |
設立時役員の就任承諾書と印鑑証明書 | 印鑑証明書は全員分必要だが、取締役会を設ける場合には設立時代表取締役の分のみで足りる | |
発起人の決定書 | 発起人全員の同意をもって決定されたことを証明 | |
登録免許税納付用台紙 | 算定額に応じた登録免許税の支払いのため、収入印紙を貼付 | |
印鑑届出書 | 会社の実印とするため法務局に届出 | |
資本金額の計上に関する証明書 | 振り込まれた資本金額の計上を証明 | |
調査報告書 | 現物出資がある場合には相当価格の調査が必要 | |
設立登記申請後 | 履歴事項全部証明書 | 各種届出で必要になるため、法務局で受け取っておく |
会社の印鑑証明書 | 不動産取引など、重要な契約の場面で必要になる |
会社設立を会計事務所に依頼するメリット
会社の設立を会計事務所に依頼することには、種々のメリットがあります。
設立までがスムーズになる
メリットの1つは、設立までがスムーズになるということです。
会社設立までには多くの手続きがありますし、必要書類を用意するにも手間がかかりますが、この手間を省くことが可能です。
税理士に依頼すれば多くの作業を代行してくれ、本来注力すべき事業に費やす時間が確保されるでしょう。
また、不備もなくしやすく、申請も通りやすくなるでしょう。結果的にスピーディな会社設立が実現されやすいです。
効果的な節税対策ができる
節税対策は設立前の段階から始まっています。
しかしながら、法律も絡むことになり、起業者本人が税制を網羅するのは非常に難しいです。
税理士がついていれば自ら調査する必要はなく、的確なアドバイスのもと、対策をしていけば良いだけです。
また、自分自身で節税対策をしようとすると、意図せず違法行為・脱税をしてしまう可能性もあります。税理士への依頼はこうした危険を避けるためにも効果的です。
創業融資や補助金、助成金の申請がスムーズになる
創業融資を受けることで、設立すぐの会社でも備品や機械、材料の購入が余裕を持ってできるようになります。しかし、相手方に信頼をしてもらわなければならず、そのための資料作成などが重要になってきます。
事業計画を作成することにもなるでしょうし、根拠ある内容で、説得的なものを作り上げなくてはなりません。税理士はその際にもサポートをしてくれます。
創業融資のみならず、各種助成金や補助金の利用、その他資金調達に関しても同様です。
設立段階から一貫した税務サポートが受けられる
設立に関して税理士に依頼することのメリットは設立時点のみならず、その後も一貫した税務サポートが受けられる点にもあります。
創業から関わっていると、会社のことを税理士もよく理解していますので、より的確なサポートが受けられます。
例えばその後も企業活動に際して年末調整業務や税務署への申告、節税対策などをしていくことになりますが、これら会社の税務に関してそのまま依頼をしやすくなるでしょう。